アドレス日本一周 east[67]
投稿日:2013年9月28日
日本一周思い出の地
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斜里の国道244号沿いの食堂「春日」で昼食。「刺身盛定食」(1200円)を食べた。ギンガレイ、キングサーモン、マグロ、タイ、イカの刺身の盛り合わせとクチグロの焼き魚。鮮度満点の刺身はどれもよかったが、脂のたっぷりのったクチグロの焼き魚もうまかった。
ほかに客もいなかったので店の主人との話がはずみ、食べながら主人の話を聞いた。
このところ斜里ではサケの豊漁がつづいているという。「斜里のサケ」といえばブランド品になっているので、ずいぶんと高値がつくという。サケの定置網漁の2、3ヵ月の間だけで、「漁師は1000万、稼いでいるよ」と、店の主人はちょっとうらやましそうにいった。
食堂「春日」を出発。斜里町から小清水町に入ったところで国道244号を右折し、JR釧網本線の止別駅前でアドレスを止めた。止別の駅舎は「えきばしゃ」というラーメン&喫茶の店になっていた。なつかしの止別。ここではコーヒーを飲んだ。
止別は「30代編日本一周」(1978年)の思い出の地なのだ。
当時、ここには「カニ族の家」という民宿があった。東京を発つ前に紹介してもらったので訪ねたのだが、そのときのことを『50ccバイク日本一周ツーリング・東日本編』(交通タイムス社)より紹介しよう。
「知床にはクマが多くてね。バッタリ出くわして、身の凍るような思いをしたことが何度もある。多いのはクマだけでなく、サケも同じで、知床はサケの宝庫だね。おもしろいように獲れる」
そう話してくれた佐々木さんは、知床半島の沢、1本1本にじつに詳しい。
「カニ族の家」では風呂に入れてもらった。北海道に渡って初めて入る風呂。気持ちのいいことといったらない。ついでに洗濯もさせてもらった。こちらの方は東京を発ってから初めてのことなので、着ているもの全部を洗ったが、洗濯水はまるで泥水だ。
夕食にはジンギスカンが出た。あまりのうまさに恥も外聞もなく夢中になっていただいた。夜になると焼酎を飲みながら、泊まり客の若者たちと語り合い、佐々木さんの知床談義に耳を傾けた。
佐々木さんの話を聞いていると、「北海道に憑かれた男」という印象を強く受けた。
風貌も大陸的だ。北海道は人間までも大きくしてしまうようだ。
「30代編日本一周」の時の基本は野宿。全行程19000キロ、64日間の「日本一周」の中で「カニ族の家」は唯一の宿になる。ここでは2泊したが、佐々木さんは宿泊費として一銭も受け取ることはなかった。
「カニ族の家」を拠点にして知床半島をまわり、カムイワッカの湯滝に入った。
屈斜路湖や摩周湖、阿寒湖をめぐり、北見ではバンバ競争を見た。
止別駅の「えきばしゃ」で湯気の立ち上るコーヒーを飲んでいると、そんな思い出が次から次へと止めどもなく蘇ってくるのだった。